ベクトル解析の基礎1:勾配(こうばい)
Nov 17, 2024高校数学で出てきた「ベクトル」という言葉は覚えているでしょうか?小学校の算数で出てくる「鶴亀算(つるかめざん)」から始まり、中学校で習う「連立方程式」、高校で習う「ベクトル」や「行列」などは線形代数(せんけいだいすう)という分野に含まれます。
一方、解析学(かいせきがく)は、微分や積分を扱う数学の分野です。
どちらも現代科学に必須の重要な考え方ですが、そんな2つ分野が融合したのがベクトル解析です。自然現象、制御工学、AIなど、実は私たちの身のまわりで頻繁に使われている超重要な数学。
今回は、オンライン学習スクール『CSA』のレクチャーで使ったスライドを公開します。ちょっと難しめですが、雰囲気だけでも味わってみてください。
ベクトル解析に出てくる重要な記号∇(ナブラ)は、高次元(通常は3次元)の微分だと思ってください。微分や積分など、ある関数に作用する働きをするものを演算子(えんざんし)と呼びます。数学系の人たちは作用素(さようそ)と呼ぶことが多いですが、同じものだと思って差し支えありません。
無限小(むげんしょう)という考え方が顔を出すのが、解析学の特徴です。高校まではベクトルといえば「向きと大きさのある矢印」のことでしたが、ここでは「向きはあるけど大きさは無い」というヘンテコなベクトルが現れました。むりやりイメージするとしたら、矢印の頭(先っぽの三角形)だけがある感じでしょうか。
勾配(こうばい)と呼ばれる計算は、スカラーの関数に演算子∇を作用させたものです。これだけ聞くと抽象的ですが、具体的には等高線に垂直な傾きのことを表します。山の谷に沿って川が流れる、気圧の高い方から低い方に風が吹くといった具合に、身の回りに具体例も豊富です。地図の等高線や天気図の気圧配置、高校の地理の授業などで目にすることも多かったのではないでしょうか?実は数学と深い関係があったんですね。
次回は、電磁気学や流体力学でもよく出てくる発散(はっさん)という計算について学んで行きましょう。